COVID-19のパンデミックによる世界への影響と経済へのショックが私たちの日常と未来をも変えうる事態となり、はや3か月が経とうとしています。多くの地域では公衆衛生の回復の兆しが見える一方、経済的影響はより長く続きそうです。

コロナウイルスによるサステナブル・ビジネスへの影響について、ようやくいくつかの結論が見えてきました。まずはじめに、世界中の企業が直面した深刻な経済問題にもかかわらず、サステナビリティへの取り組みは依然として堅調に見えることです。企業は、ウイルスが広がる以前からサステナビリティがレジリエントなビジネス戦略の中核であり、今となっては戦略的優位性の源であり、世界経済の再構築に不可欠な要素となることを理解していたのです。

そしてこのことはESG投資からも示されています。環境、社会、ガバナンスにコミットメントしてきたメインストリームの投資家が、その姿勢を崩していないことは希望の兆しです。パンデミック初期の株価下落の折、ESGファンドは、より良いパフォーマンスを示し、下落幅も小さかったといわれています。あるデータでは、米国の主要ESG投資信託の60%はS&P 500よりも優れたパフォーマンスを示したとされます。Morningstarのデータによると、3月の世界各地でのロックダウンにより市場は劇的に鈍化しましたが、ESG重視の大型株式ファンドの62%がMSCIワールドインデックスを上回りました

しかし、これは今世紀最大の転換期ともいえるこの3か月の広範且つ深刻な影響によって、サステナビリティが何も変わらないと言っているわけではありません。サステナビリティへの影響は大きいのです。

現実は、多くの企業が事業継続と資金繰りの問題に直面し、大きな傷を負っているのに絆創膏しか与えられていないという状況です。こうした中で、BSRメンバー企業の多くの方から「サステナビリティについて語ることは、今はふさわしくないでしょうか?」と聞かれました。私は「いいえ。今、あなたがどのようにサステナビリティについて話すか、何を優先するかが問われているのです」と答えました。

必要とされる価値を届け、従業員を支え、短期的利益よりも大切なことに取り組む姿勢を顧客に示すことが、今求められているサステナビリティのアジェンダです。

また、課題に適応していくことが大切です。以下は、重要性の高い6つの大きな課題です。

  • ESGの“S” (社会)がかつてない程に重要となる。
    数千万の人々が仕事を失い、生計や健康、社会的な結束について憂慮している今、社会的なアジェンダの重要性が増しています。労働慣行にはより厳しい目が向けられます。この危機で、女性や弱い立場の人々が一層不利な立場に置かれています。こうした弱者の声に十分な注意を払う必要があります。BSRはメンバー企業と共に、ダイバーシティとインクルージョン、インクルーシブな経済成長、人権問題に取り組んでおり、これらの課題への取り組みが、労働者、コミュニティ、規制当局と投資家からの期待に応えるためにより重要となります。
  • 新たなテクノロジー利用が加速する中で、人権やプライバシーへの配慮が必要になる
    このトピックの重要性は高まっている一方で、個人情報の追跡や職場での従業員のモニタリングは、健康と安全を守りながらプライバシー及び人権をいかにして守るか、という重要な問を投げかけています。これまでも、人権の原則に沿った新たなテクノロジーの活用を推奨してきましたが、今この問題はすべての企業が取り組むべき重要なアジェンダとなっています。
  • 事業継続を確保しながら一時解雇や休職中の従業員の再配置に追われ、サプライチェーン企業は大変な重圧を受けている
    グローバルサプライチェーンの何千万人もの労働者(その多くは女性)は、経済的困難に直面しながら、ジェンダーに基づく暴力の脅威とも戦っています。企業はまた、消費者需要の回復に対応するために、サプライチェーンを維持しなければなりません。協働イニシアティブHERessentialsプロジェクトは、パンデミックによって生計手段を失った何百万人もの女性のニーズが確実に満たされるように支援しています。
  • 失業者数が歴史的な規模となる中で、役員報酬と納税に対してより厳しい目が向けられる
    長年、経済的平等性はサステナビリティのアジェンダから外されていましたが、この歴史的な経済混乱をきっかけに見直す必要があります。この問題へのBSRの取り組みの一つの方法として、メンバー企業や他のパートナーと協力して社会契約(Social Contract)の再定義に取り組んでいます。今後、このテーマについてより詳しくお伝えしていきます。
  • 過去3か月の経済の停止の結果、CO2の排出量は驚くほど減少
    しかし、それでもパリ協定の達成に必要な年間の削減目標には足りないのです。気候目標の達成のために排出曲線を早急に減少へと転じさせるためには、どれだけのイノベーションが必要かを思い知らされます。ここでの良いニュースは、投資家がコミットし続け、企業が正しい軌道を進むように明確かつ直接的なインセンティブを生み出し続けていることです。 気候変動対策への企業によるコミットメントは引き続き強力であり、私たちもTCFDに基づく分析、スコープ3の削減計画、気候変動へのレジリエンスの支援を続けていきます。
  • 最後に、健康とウェルビーイングのアジェンダがより重要になる
    ウィルスの影響を出来るだけ早急に鎮静化することに加えて、従業員の身体的な健康だけでなく、予期せぬ困難に直面する従業員をケアすることの必要性を企業は感じています。健康経営への投資は理に適うからです。協働イニシアティブHealthy Business Coalitionでは、バリューチェーン上の労働者の健康に投資する企業と共に取り組んでいます。健全なサプライチェーンは、労働生産性を高め、顧客により良いサービスを提供し、消費者がより長く、より充実した生活を送れることに貢献し、コミュニティの繁栄をもたらします。こうした活動は、コロナウイルスの状況において、より一層重要性なものとなります。

取り組むべきことは多くあります。多く人が不確実性、差し迫った健康ニーズ、そして経済復興への長い道のりに直面していますが、気候と環境の課題もやはり重要です。

サステナブルビジネスに取り組む私たち自身も、そのやり方を工夫しなければなりません。私たちの仕事は、ビジネスの成功とレジリエンスに不可欠かつ重要ですが、それは問題と解決策に適したアプローチを採用してはじめて実現できるでしょう。きっと事態に対処し、より良い未来を築くことができるはずです。それを可能とするために、これまで慣れ親しんだサステナビリティのアプローチから一歩踏み出さねばなりません。