昨年12月、Uberは初めての安全性報告書U.S. Safety Reportを発行し、負傷、死亡、性的暴行や不正行為など深刻な安全上のインシデントに対する同社のアプローチを紹介し、近年の同社による安全性向上への投資を説明しました。 この報告書には、会社の安全面の実績を評価し、問題の規模と特性をより深く理解するための豊富な定量データと説明が示されています。 1つの例をあげると、メディアが頻繁にドライバーを性的暴行犯罪者として報道する傾向がある中で、報告書によると、乗客の被害とほぼ同じ割合でドライバーが乗客から暴行を受けたと訴えているという驚くべき実態が示されました。

いくつかのデータは、ライドシェアリング会社に朗報をもたらすものもありました。ドライバーの適性検査を行っていること、年齢が若いこと、および車両が新しいこと等が要因と推測されますが、Uber関連の自動車事故の死亡率は、全米平均の約半分でした。 しかし、データからの情報は肯定的なものばかりではありません。報告された性的暴行事件は乗車数のごくわずかな割合(0.0001%未満)にすぎませんが、それでも年間3,000件以上の事例が発生しているのです。

BSRが最も注目したのは、同業他社にはこうした動きがない中で、Uberが初めてこのような内容の報告書を公表したことです。Uberがこれら重要な問題を自発的に公表したことは称賛すべきで、同時に他の企業に対しても、レポーティングの持つ価値について重要な教訓を提示していると考えます。

Uberの報告書から読み取れる透明性と情報開示の今後について、5つの洞察は以下の通りです。

  • 企業が率先して透明性のある情報開示を行うことで、問題に対する前向きな取り組みが可能となります

    ほとんどの企業は性的暴力のような問題について語りませんが、Uberの最高法務責任者トニー・ウェスト氏は報告書の発表にあたり、「性的暴力に立ち向かうには誠実さが不可欠です。これらの問題に光を当てることによって、社会の隅々まで問題を明らかにし対応することができるのです」と説明しました。 この事は10年前、ユーザーデータとコンテンツの制限への政府からの要求の状況を明らかにしたGoogleの最初の「透明性レポート」を思い出させます。当時の企業は、これらの問題を公に議論することに消極的でしたが、Googleはあえて殻を破ることを選択しました。今日、これらの問題に関する公の場での対話の質は大幅に向上しています。企業は、他社の行動を待つだけでなく、自らの透明性と情報開示を駆使して、共有する課題に新たな契機を創出する可能性を持っているのです。

  • 類似した課題を抱える企業は、それらについての比較可能な情報を公開すべきです

    Uberの報告書で提起された問題はUber固有のものではなく、またUberが単独で克服できるものでもありません。 Uberの同業他社に対する挑戦は、今回の安全報告書の最も重要な意味を持つポイントです。Uberは、航空会社、タクシー、乗り合い、ホームシェアリング、ホテル、その他企業に対して、それぞれの安全報告書を顧客に公開し、この報告書を更に発展させていくように呼びかけました。 これはGoogleの最初の取り組みを契機に、70社を超えるインターネット企業と通信会社が「法執行関連の定期報告書」の発行を開始し、それによって市民社会組織、政策立案者およびその他の支持者に大きな利益をもたらした事例を思い起こさせます。 今後、Uberの安全報告書と共に同様のパターンが出現することを望んでいます。

  • データを利用する人とのパートナーシップが不可欠です

    情報開示の先駆者にとっての課題は、何を報告すべきかを理解することです。どのようなデータが意思決定に影響を与え、問題に取り組む人々に価値を提供することができるのでしょうか。 Uberは、National Sexual Violence Resource Center(NSVRC)およびUrban Instituteと提携して、望ましくない性的体験の現実を把握するための新たなデータ分類法を開発しました。これまでなかったこのツールは、現在、他の企業や組織も利用できるようになっています。 これによって、企業がUberの報告書と比較可能な独自のレポートを発行する際の強力な基盤が利用可能となり、業界全体の取り組み推進への道が開かれました。

  • 特定課題に焦点を当てたレポーティングの重要性が高まっています

    4年前、BSRは「将来の報告書は三角形型になる」という見方を発表しました。三角形の上部には簡潔で全般的な情報をまとめた報告書があり、その下に詳細な個別課題に関する報告書を位置付けた体系です。 Uberの報告書にみられるように、プライバシー、ダイバーシティ、気候変動、サプライチェーンの労働条件など、今日最も関心の高い企業の情報開示は三角形の底辺にあたります。特定の対象者に向けた具体的な課題に焦点を合わせたレポーティングは今後さらに進展するでしょう。

  • レポーティングは企業パフォーマンスを改善するためのものです

    Uberが新たに整理した、セクハラ、不正行為、暴行に対する一貫性あるデータ分類法は非常に重要です。なぜなら一貫性ある分類法がないと、現場は改革を進めることが難しいからです。この一貫した分類法を活用しながらトレーニングの質を高め、安全技術への投資分野を見極め、パートナーシップを向上させることによってUberと同業社のパフォーマンスが改善していくことを願ってやみません。National Sexual Violence Resource Center(NSVRC) のCEOカレン・ベイカー氏はUberの報告書の序文で「NSVRCが産業界や企業に変化を起こす方法を伝え、生じた変化が性的暴力を防止し終止符を打つことにいかに貢献するかについて、これほど多くを学べることができるとは想像していませんでした」と強調しています。透明性の向上により、ドライバー、乗客、スタッフ間のカルチャ―が変化し、安全上の事故を真剣に受け止める世の中につながっていくことが期待されます。

自らが作り出した社会への負の影響を企業が無視していると批判することは簡単ですが、現実には、社会共通課題を解決するための社会システム全体の変革は困難を伴う試みです。Uberの安全に対する取り組みを推進する過程で、皮肉にも報告される事故件数は減少に転じる前に一時的に増加する可能性はありますが、それが悪いニュースとして伝えられるのではなく、むしろ重要な問題が公然と対処されている兆候として歓迎されることが望まれます。新技術、コミュニティ・ガイドライン、安全諮問委員会などについて、今後もUberの安全性報告書の発展が楽しみです。そして安全上の問題に関する新しい報告手法へのUberの投資が、米国外でのUber事業と共に、他の企業にも採用されることによって、性的暴行と不正行為撲滅に向けた私たちの共同の取り組みが進展することを願っています。